Try!XML,XSL
エッセイ「新婚夫婦のXML的生活」前編
「結婚」が、こんなにたいへんなことだなんて、おもってもみなかった。
「結婚そのもの」が、ではない。
「結婚そのもの」はカンタンだった。
わたしが相方の住む町に移動したわけだが、新居は、2週間で決まった。見付けてきたのは、相方のパソコン仲間である。
移転作業もすぐに片付いた。金曜日、仕事を済ませるや、近所のスーパーで山ほどのダンボール箱をわけてもらい、夜中にゴソゴソ箱詰めして、早朝、搬送業者の軽トラックで搬出。土曜日、相方が会社の昼休みに職場を抜けて搬入立ち会い、という形をとり、わたしも移動して、日曜日に掃除。39800円ナリでサクッと完了。
新居の生活用品も、全部、このパソコン仲間が手配してくれた。この人、商業関係の仕事をしているのだ。
わたしはExcelで必要な生活用品の一覧表を作成し、費用を合計しては唸り、メールに添付して相方へ送った。相方は、不足分を付け足し、この仲間に渡した。それで、洗濯機から炊飯器まで、すべて揃ってしまった。
結婚式は、していない。写真も撮らなかった。
だいたい、あんな金魚みたいに口を塗りたくられて、顔は白壁づくり、どこがキレイなんだか、わたしにはサッパリ分からない。あんな顔になるために、貴重な人生の時間を費やすのはゴメンである。デザイナのクセにヴィジュアルに関心がないのか?と言われそうだが、花嫁のヴィジュアルというのは、どうにも没個性である。もし、花嫁が美しいとしたら、それは、結婚を喜ぶ気持ちが表情に表れているからに他ならない。その美しさは内面によるものであって、あの「塗装」のせいだとはおもえない。
新婚旅行には、まだ行っていない。展示会のあるときを狙って旅行し、メインは秋葉原めぐり、と、予定自体は、とうの昔に決まっているのだが、仕事の都合でなかなか出かけられない。
というヲたく夫婦であるから、デートもヲたくである。
この「Try!XML,XSL」コーナの「コラム」の最後に書いた、初デートの日に「XML入門」を買ったという話が、なにやら読んだ人たちの間でウケているようだが、真相は、こうだ。
初めてのデートの日、といえば、これがドラマなら、「これから二人はどうなるのか」とドキドキするものだが、このヲたく二人の場合は、初デートのまえに、既に結婚を決めていたので、ドキドキするはずもなかった。
つまり、メールで結婚を決めたのだが、よく考えてみればお互いに顔を見たことがなかったので、「顔を見たことない相手と電子メールで結婚を決めた」というのは非常に世間ではイメージが悪いわけであるから、これは周りに報告するよりも先に会っておかねばならん、ということで会ったわけである。それが、まぁ、初デートだったんである。
ふたりの住むところの中間地点で会おうということになったものの、どちらも方向音痴でどこに何があるのかサッパリ分からない。それで、ネットの友人に相談したら、Photoshopでザラザラ書いたデートコースをメールに添付して送ってくれたので、相方に転送、プリントアウトして持ってきてもらった(わたしはプリンタを持っていない)。ふたりの個人Webサイトをよく見ているこの友人は、最高のデートコースを書いてきた。つまり、ケーキのおいしい店に行き、その後、パソコンショップに行き、紀伊国屋のパソコン本コーナに行く、というコースである。
紀伊国屋で、わたしは、前々からほしかった2冊の本を見つけた!「インサイドDynamicHTML」と「XML入門」である。うれしくなって買ったあとで、よく考えてみて、なんか変だとおもった。年のずいぶん離れた男性とのデートなんである。しまった。おねだりして買ってもらえばよかった。
さて、本題である。
非常にたいへんな「結婚」
なにが大変かといえば、「結婚に伴う諸手続き」である。
通常、勤務している女性が結婚する場合は、同じルートをたどるとおもうが、なんとも厄介である。
退職する。入籍する。姓が変わる。転居する。通常、女性のほうが移動することになる。わたしの場合は、当時サラリーマンしていた相方よりフリーのわたしのほうが、仕事に地理的な制約が響かないだろうという理由で移動したわけだが、通常は、仕事に関係なく、女性が相手の家にはいるケースが多いとおもう。
専業主婦ならまだしも、仕事を続けるとなると、手続きの嵐である。
退職した時点で、社会保険が国民健康保険に変わる。年金の手続きも必要だ。移動先で婚姻届を出す。移動元で転出届を出し、今度は移動先で転入届を出す。国民健康保険は、一人のものから、相方が世帯主になるので、相方の会社で保険証を書き換えてもらう。新しい姓名で、銀行口座をつくる。電話料金や携帯電話料金など、引き落としになっているものは、改姓届けを出したうえで、引き落とし口座を変更する。銀行の口座の改姓届けも必要だ。わたしはこの間に、事業届も出した。
移動先と移動元を1往復すると、旅費だけで1万5千円かかるうえ、移動元にはアシがないから、役所に行くにもタクシーを使わざるをえない。
ムダな出費をしたくないし、仕事の合間をぬっての1日がかりの移動であるから、できる限り効率よく動くようにと予定を組むも、いくらこちらが効率を考えても、事務手続きをする相手側は効率など考えていないのだから、困ったもんである。
移動元の市役所とは、移動して落ち着いた後も、保険の件で、何度電話でやりとりしたか分からない。 「これで全ての手続きは完了ですね」と念には念を押して手続きを済ませ、ああ、これで手続き完了、ホッとして移動したというのに、やれ、前年度の所得と納税額が分からないので年金額が定められないと、電話がかかってきた。
何回かやりとりするなかで、こちらからかければ「担当不在」と言うので、電話番号を教えると、挙げ句、ウチに電話するはずが、その担当者は何をおもったか、ご町内の別の企業に電話。この企業は、ウチの前にISDN契約しているようだから、うろおぼえの電話番号を探すうちに、下二桁が全く異なる二つの電話番号を間違えたのだろうと推測する。
全く見知らぬ役所からの訳の分からない電話を受けた、その企業の担当者は、不審におもって、ウチに電話をかけてきた。相方が電話をとってビックリ、その担当者、驚くなかれ、なんとバツイチだった相方の前の奥さんだった。その会社に勤務してたんである。ウソのようなホントの話。
結局、わたしの前年度の所得と納税額は、市民税課から保険課へ書類が回ってくるのが遅かったため、保険課で把握できていなかったということだが、役所内の工程管理の問題で、元市民が振り回されなけらばならない理由が分からない。しかし、役所とはそういうものである。
移動先で婚姻届を出した数日後、移動元の役所に行き、転出届を出した。ところが。転出届を受けた担当者、「あのぉ、結婚したことになっていないんですけど?」
わたしたちは、たしかに、ふたりで役場に婚姻届を持っていった。そして、受理した担当者から「婚姻の旨を元の役所のほうに伝えておきますから、転出届を出してください」という一言をしっかと聞いた。それなのに、なんじゃ、こりゃ?
相方は勤務中である。昼休みを待ってケイタイで電話、相方が転入先の役場に電話。担当者から帰ってきた答え。「忘れてました」
役所の担当者のうっかりミスで、新町民が振り回されなけらばならない理由が分からない。しかし、役所とはそういうものである。
そんなこんなで、移動先の役場、銀行、移動先の隣町(遠い)にあるNTT、デジタルツーカー代理店、移動元の役所と銀行、これらを行ったり来たりで、どれだけ労力と時間と交通費を使ったかわからない。結婚して1年になるが、まだ改姓手続きのできてないものが、2件ある。
いちばんカンタンだったのは、NTTである。
ISDN回線の移動は、NTTのWebページから申し込んだ。後は、電話で数回やりとりして、仕事に支障をきたすこともなくサッと片付いた。インターネットを使っている企業は、さすがに対応が早い。
移動元の役所のインターネット事情は悲惨である。悲惨であった、と過去形で言ったほうがよいかもしれない。ここ1年間の事情は知らないのだから。
で、1年前までの事情をどうして知っているかといえば、2年半ほど前に、この役所のホームページの1コーナを作ったからである。このときも、ファイルをそのままアップすればよい形にして3.5インチFDで渡したものの、アップされたのは1カ月後、正式に公開されたのは1年以上後であった。IE4.0が出始めた頃に、ネスケ2.0用に作ったページを「New」なんて光るアイコンを付けて宣伝されては返すコトバがない。
2年ほどまえ、メカトロ関係の公共的なWebサイトを作り、プレス発表をすることになった。どこでお披露目するかということになり、では役所のパソコンを借りようという話になって、コケた。役所の環境はネスケ2.0のままだったのである。ネスケ3.0とIE3.0対応で、HTML3.2とインラインスタイルシートを併記して作っているのに、ネスケ2.0ではフレームボーダーさえ消えないんである。タイトル文字には画像を使わず書体指定で軽くしているのに、これが利かないんである。役所のソフトを勝手にバージョンアップするわけにはいかない。いさぎよく諦めた。結局、記者がWebマスタの企業に出向いた。
では、この移動元の町のネットワーク化が遅れているのか、といえば、そんなことはない。
技術力に優れたプロバイダがある。CATVもある。(10数年前、町の有志によるCATV会社設立準備委員会の事務処理を、LOTUS1-2-3と一太郎で担当したのはわたしである)先日は、なんと!XMLのセミナーまで開催された。(仕事の都合で参加できなかったのが、残念でならない)
メカトロニクス、エレクトロニクス産業に関わる企業が多い都市なので、産学のニューメディアに対する意識は結構高い。遅れているのは、なんといっても、いちばん事務処理の合理化にパソコンやネットワークを活用しなければならないはずの、役所である。
米国ではPDFが公共文書で使われている、そんな記事を雑誌か何かで読み、これまで制作したいくつかの企業サイトにはPDFを付けてきた。Webマスタたちも「これは便利」と喜んでくれた。だが、役所からはPDFのPの字も聞こえてこなかった。
そんななか、情報公開法のニュース。Web上で公開されるものは、当然、XMLになるだろう。だが、末端の役所の事務の現場では、この時代の状況を正確にとらえることができるのだろうか。 先般より、XML-UsersというMLに参加している。「提出文書のXMLデータ化」という話題が盛り上がっている。配信されたメールを読んでいると、万が一トップの省庁でXMLがうまく運用されるシステムが確立したとしても、末端の役所では、混乱をきわめるだけだとおもう。
ずいぶん前置きが長くなった。このエッセイ、末端の官庁提出書類について書こうとおもって書き始めたのに、役所への文句を書いていたら、まだ本題に入っていない。
というわけで、本題は、次のページだ。毒舌を大いに楽しんでください。
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