Try!XML,XSL
エッセイ「新婚夫婦のXML的生活」後編
5月6日は結婚記念日だった。5月5日がコドモの日、では、まぁ、結婚とは大人への一歩であるから、5月6日にしよう、というので、一緒に婚姻届を提出しに行った。
もっともわたしには、いくら性格が浮世離れしていて南の島のハメハメ〜みたいな相方でも、コドモの日の翌日にすれば忘れないだろうという気持ちもあった。だが、今年。しっかり相方は忘れていた。「え〜っと、結婚したのって、たしか5月か6月だったよね?」あ〜。拗ねる気力も、ない。
わたしたちは法律で規定された夫婦関係ということには頓着しないものの、周りがウルサイので入籍したわけだが、入籍したがために、事務手続きの煩雑さと役所の対応の悪さに振り回されることになってしまった。女性が結婚後も仕事を続けようとするなら、夫婦別姓はたしかに必要である。あまりにも事務処理が面倒である。
銀行に改姓の手続きに行ったときの、行員の一言にに、わたしは少なからず衝撃を受けた。「○○(旧姓)さんは、もう存在しないわけですから」そう、わたしはわたしという存在であるのに、姓が変わっただけで、書類上は別人になってしまうのだ。我おもう、しかし、我なし。
このような違和感は、養子にでもならない限り、男性には分からないんじゃないかな。
さて、まだ結婚1年が過ぎたところであるから、新婚である。アツアツである。毎日ホットである。なぜホットであるかといえば、XMLがおもしろいからである。新婚とはいえ、ヲたくなのである。ヲたくが新婚になったのであって、新婚がヲたくになったわけではない。つまり、ヲたくが親タグであって、新婚は子タグである。順番が重要なんである。順番を間違えると、エラーでコドモが生まれてしまう。しまった、筆がすべってしまった、いや、すべったのはマウスだった。
というわけで、夜ふけてベッドルームに移り、そこで密かに話していることは...なんていうのは非ヲたく系夫婦の話であって、こちらは、夜ふけてテレホ時間帯になってからが本格的な仕事である、だからパソコン塾の塾生は喜んでいる。夜、自宅で復習をしていて分からなくなると電話してくる。ウチは受講期間中の塾生に限り、朝10時から夜中の1時まで、サポート電話を受け付けている。2時3時にもなると、仕事は絶好調であって、ふたりともまだマシンに張り付いている。そのうち、どちらかが「いいかげん寝ないといけんね〜」「でも、もうちょっとココのプログラム書いときたいんだよね」ぐずぐずしながら、結局、睡眠も大事であるよと、マシンの谷間に布団をひきずってくる。それでも、気持ちがハイなので、なかなか眠れない。天井を見上げて話す。「XMLのサンプルについてなんだけど〜」
国安「XMLのサンプルについてなんだけど、なにかもっと実用的なものを作りたいんだけどね」
聖「会社で作ってたシステムのXML化はできないの?見積から在庫管理まで、1-2-3やExcelでやってたようなのをそのままXML使ってできるようにすると、イントラやエクストラでも参考になるとおもうし」
国安「オレも、それを作ってみようとおもってるんだ。でも、そのまえに、住所録にプラスアルファしたようなものを作りたいなあ」
聖「住所録、好きだもんね。それなら、役所の書類みたいのを、なんか作ったら?住民票だったら、持ってるけど」
国安「あ。それ、見せて見せて、それ作る」
せっかく布団を敷いたのに、また電気を点けてしまった。
聖「住民票、里のと、こっちのとあるけど、どっちのフォーム使う?」
国安「えっ?住民票のフォームって、市町村で違うのかぁ?」
聖「びっくりした?せいちゃんも、さいしょ、みたとき、びっくりしたぁ」
国安「あれ?全然違う!これじゃ、作るといっても、元のフォームさえ固まらないぞ」
ザッと見てみよう。転入先の住民票では、世帯主、続柄、本籍、筆頭者の欄は「省略」、転出先の住民票にはある、異動年月日、届出年月日、異動事由、転出先(転出予定届出、転出通知)欄がない。
2つの市町村でさえこれほど異なるのに、全国ともなればどうなるのだろうか。
このような末端の簡易な書類でさえ、これほど違うのでは、XML化なんて夢のまた夢、どんな見識者でも、違いを吸収するDTDなんてできるはずがないだろう。
ただ単に、サンプルページを作ってみようとおもっただけのわたしたちもアタマをかかえてしまい、ふたたび布団にもぐりこんだ。
聖「仮に、項目の多いほうを作るとして、どういうタグのくくりにするといいのかな?」
国安「1家族1ファイルで、どうかな?住民票も1家族1ファイル、健康保険なども1家族1ファイル、それらの本人氏名で検索させる」
聖「そりゃ、夫婦別姓唱えてる女性たちからは反論あるんでないの?一人1ファイルがいいんじゃないの?住民票も健康保険のデータも一人ぶんは1ファイルにまとめて、その人が関連するファイルにリンクを張る。リンクの張りかたは、1対多ではなく、家族から世帯主、世帯主から家族。木構造というか、親等を表すときみたいな構造のリンクにする。女のコがケッコンした場合、その女のコ一人のファイルを変更すると、関連する家族のファイルも変更しなくちゃいけないわけだし」
国安「そうだなあ、その方法になるかなあ、その方法にする場合、タグの親子関係はどうなる?」
聖「そりゃ、難しいよう。生年月日、性別を本人というタグの子タグにするかどうか。世帯主と筆頭主をどう関連付けるか。こんなの、役所の担当者でも分かないとおもうよ、全体を見渡せる人じゃないと。そんな難しいコト、せいちゃんに聞かれても、分かんないもんっ」
国安「こりゃ、拗ねん坊になってはいけん。でも、いつか、そんなXML化ができたとして、誰が住民全員のデータを入力するんだろうね?」
聖「さぁ?」
国安「役所に1台専用のパソコンを置いて、各市町村で入力するしかないんだろうな、でも、この町でも1万人だぞ。1万人のデータベース、役所の担当者、一人で作れるかぁ?」
聖「それはムリだよ、それなら、国勢調査みたいにサ、パソコン使える調査員を各市町村に複数決めて、そのひとたちに入力させるとかサ」
国安「それなら、区長さんとこに、ノートパソコンを置けばいい、毎年、区長さんは変わるから、パソコンごと引き継いで移動させればいい。そうすれば、区長さんたちは、パソコンを憶えざるをえなくなる」
区長さんとは、この町では、町をいくつかのブロックに分けた「組」と呼ばれる自治組織の長である。 自治会会長みたいなもんだ。
先日、パソコン塾の元塾生(入門講座の修了生)宅に、プリンタ不良のサポートに行ったら、ご主人が一太郎で組のお知らせを作っていた。「必要な用紙のフォーマットを、コツコツつくったんですよ。それで、新区長に、このデータを渡して、利用してもらおうとおもっとるんです」これでは、新区長は、一太郎を使わざるをえなくなるわけだ。
聖「こないだサポートに行ったトコの、区長さんみたいになるねぇ」
国安「そうそう、それで、少しはパソコン・ユーザが増えるかも」
聖「でも、区長さんたちががんばるコトになったとしても、データベース揃えるまでには、相当期間がかかるだろうね」
国安「2年くらい、かかるんでないか?その間、住民が異動したら、どうなるんだろう。異動できないな。1年間で済ませるにしても、全国一斉にとりかからないと難しいだろうな」
聖「本日よりXMLデータベースを整備するので、国民の皆さん、ここ1年間は、住民の異動がないようにしてください、とか」
国安「そうそう、テレビやインターネットでアナウンスがある」
聖「んじゃ、死なないでください、とか、生まれないでください、とか」
国安「そうそう!」
聖「それは、たいへんだ。つまり、こうなる。死に直面している人がいる。家族が見守っている。そのとき、政府がXMLデータベース化の発令をした。医者も家族も患者をゆすって叫ぶ。いま死んではいけんっ!あるいは、こうだ。産婦人科で、いままさに赤ん坊が生まれようとしている。頭が見えてきた、あと少しだ、がんばれ、そのとき、看護婦が飛び込んでくる。先生、XMLデータベース化の発令がありましたっ!先生は、おろおろ。いま生まれてはいけんっ!」
国安「わははははは、そのとーり、そのとーり、生まれてはいけんっ、国民データベースが変わってしまう」
聖「それとか、こんなのはどーだ?愛し合っている夫婦がいる、そのときインターネットラジオから、XMLデータベース化の発令というコトバが聞こえてきた。大変だ!赤ちゃんができては異動になるっ!慌てて身を離す二人!」
国安「それは、たいへんだっ!」
慌てて身を離してしまった。別に何もしてなかったんだけど。
聖「悪ノリのついでにサ、ニューヨーク大停電みたいになって、XMLデータベース化の発令が届かなかったら、どうなるのかな?」
国安「......」
聖「あ。悪ノリすぎた?ごめんっ。こりゃ、何か言え」
横を見ると、おっと、スッカリ眠っている。
まぁ、そりゃ、一日16時間ほど、マシンに張り付いてるのだから、眠くもなるわい。
そんなせいちゃんも眠いので、自分の布団を敷いて、トトロを抱えて眠りにつくのであった。
ちゃんちゃん。