コラム2.日常生活でのXML
XMLを広く一般のインターネットユーザに知らしめるには、何よりもまず、ビジネスモデルを確立し、それが直接日常生活に役立ちそうだというイメージを作り上げることが重要ではないでしょうか。
この景気低迷の時期に、新技術に発展性を見出すには、(1)経費削減、(2)雇用確保、(3)社会福祉、の3点をおさえてPRすることではないかとおもいます。
ここでは、「介護保険」導入で話題になっている高齢者介護を軸に、日常生活へのXMLへの展開方法を考えてみます。
高齢者が安心して老後をおくり、介護者の年代の人も安心して仕事に打ち込むために、インターネットを利用できれば、インターネットにまつわる負のイメージや、新技術への無理解も払拭されることでしょう。
これからは「介護」が、経済にとって、重大な問題になってくることは確実です。そこで、たとえば、公共機関の文書のPDF化や、XMLを実用化するための(プライバシー流出の恐れのない範囲での)データ入力が、SOHOの雇用確保に役立つようなシステムができれば素晴らしいのですが、公共の場の埃をかぶっているマシンを見ると、これはなかなか厳しいかもしれません。

シルバーのための雑誌「明日の友」によると、高齢者の家族の2大心配要因は、1に「もし、倒れて自分で救急車を呼べなかったら」、2に「火災を起こしたら」だそうです。2は、ガス機器やストーブなどを、レンジや暖房に置き換えることにより解決できますが、1はなかなか難しい問題です。実際、倒れて口もきけず、近隣の人が気付いたり、そのまま亡くなったりという状況を、しばしば耳にします。
行政の非常呼出ブザーは、高齢者と同じ市町村内に連絡先保証人が必要であり、子供や親戚が市外に居住していると、申請できません。また、電話機に取り付ける民間企業の機器も、高価なうえに取り付けるには複雑な手続きが必要というイメージを与えているようです。
また、一般的に使われている携帯電話は、操作が複雑で、ディスプレイの文字も高齢者には読み難いのです。
仮に一般家庭用電話で119番にかけられたとしても、脳や心臓の病気で倒れた場合は、動転して何を言えばいいのか分からなかったり、声が出なかったり、意識が薄れたり、といったことが考えられます。
しかし、現在、消防署からの逆探知は不可能だそうです。データベースが整備されていないから分からない、というわけではないようです。子供による無言のいたずら電話が非常に多く、それらすべての発信地を検索していると、本来の救急活動に支障をきたしてしまうのだそうです。
このような問題は、多かれ少なかれ、現実のものとなってきます。ただ、今は、ウェブデザイナやウェブプログラマには若い人が多く、両親も高齢者の年齢に足を踏み入れていないかもしれませんが、少子化が進んでいるため、介護が問題となる時には、夫婦二人が共働きをしながら子供を育てながら同時に四人の高齢者を介護するという状況も、多々発生するとおもわれます。
そこで、わたしなりの、理想とするモデルを考えてみました。
これは、いわゆる「絵に描いたモチ」です。この通りになるとは全くおもっていません。ただ、XMLの説明のために、このようなサンプルを使っているに過ぎません。
だいいち、社会福祉法人なり第三セクタなりの先導的な企業が必要です。さらに、携帯電話も、もっと高齢者にやさしいものが必要です。
では、順を追って流れを見ていきます。
まず、高齢者は、シルバーサービスの企業に、問い合わせの電話をかけます。企業では、PDFの規約書を用意しています。担当者が訪問し、出力したPDFの規約書を説明して、OKなら、会員登録をしていただきます。必要事項を記入して自社に持ち帰り、XMLファイルに会員データを追加します。
このデータとは、住所・氏名・年齢・血液型・既往症・家族構成・電子メールのアドレスなどです。救急時に即間に合うよう、自宅付近の地図をイメージデータとして、XMLのデータに関連付けます。
ホームページの閲覧をできる高齢者なら、直接ホームページにアクセスして、PDFの規約書をダウンロードして印刷し、記入後ファクシミリで送ったり、フォームから必要事項を入力することもできます。
FORMから送られたデータは、担当者が目を通したうえで、XML変換して、データベースに蓄積します。
FORMを使う場合、要素INPUTのname属性と、hiddenと組み合わせるname属性を工夫することにより、記入された内容が、何らかの文字列で挟まれた形になります。それらの文字列は、置換のような形でXMLのタグに変換することができます。
こうして、XMLのデータベースが整備されます。
さて、高齢者は、この会社からいろいろなサービスを受けることができます。
懸念の緊急時の対応について考えてみます。
万が一具合が悪くなった場合、携帯電話のボタンを押すと、自動的にこの会社のホームページにアクセスし、もう一度ボタンを押すと、フォームが送られます。宿直担当者は、メールのプロパティ情報から、XMLデータベースを検索します。すると、会員のデータが分かるので、逆に、携帯電話にかけてみます。状況に応じて、119番に通報するか、別の担当者が駆け付けます。
このようなシステムがあれば、緊急連絡先の家族が、病院などの携帯電話を受けられない場所にいても、電話が話し中であっても、助かる可能性が多少なりとも高まるとおもいます。
駆け付けた救急隊員の活動について考えてみます。独居であったり、家族が遠方にいる場合、高齢者の病歴などが分かりません。このため、官公庁が保険のデータベースを、通院している人であれば、病院が病歴や服用中の薬、血液型などのデータベースを整備しておけば、ノートパソコンを持って移動することにより、データを得られます。
救急車のなかでは、患者の家族が同乗した場合、氏名や住所などを記入するようになっていますが、大揺れに揺れる車内で、うめく患者を横にはげましながら記入するのは、なかなか厳しい作業です。これが患者一人ならどうなることかとおもいます。救急隊員さんたちも必死で仕事をしており、大変なように見受けられます。インフォームドコンセントどころの騒ぎではありません。こんなとき、データベースがあれば、多少は患者の家族も隊員も、気分が楽になるかもしれません。
病院では、患者の病歴や治療法をデータベース化することにより、遠隔地の医師同士が連携できるようになるかもしれません。随時新しい情報を得られることになり、治療に役立つ可能性もあります。
保険に関するデータベース化も望まれます。
社会保険事務所と役所の担当者の指示が異なったり、役所の複数の担当者によって指示が異なり、何を準備してどのように処理すればよいのか困るという事例は、多々耳にします。
担当者は、一生懸命業務をこなしているのかもしれません。しかし、事務処理方法が、人対人の帰納的な関係で損なわれるものであってはならないとおもいます。一貫性を持たせるためには、データの整備が必要です。
一方、社会福祉協議会では、ホームヘルパーを派遣するために、訪問先のデータベースを整備する必要があります。訪問先のデータや、ヘルパーの勤務表を手書きで整理すると、データを再利用できません。
わたしたちのパソコン塾では、このような管理業務を合理化するために、ヘルパーさんがExcelを習い、自分の力でフォームを作ろうと努力しています。訪問先にノートパソコンを持って伺うという方法が実現すると、個々のヘルパーが転記に要している時間を大幅に短縮できるそうです。
シルバーサービスの会社や病院では、入院患者やデイケアの通園者、そして糖尿病や高血圧を患う高齢者のために食事を用意しますが、この栄養価の計算にも、XMLのデータベースが使えます。
またまたパソコン塾の塾生の話になりますが、つい先日まで栄養士の方にExcelを教えていました。
受講申し込みがあったとき、わたしは、てっきり栄養価の計算を自動で行ないたいのではないかとおもいました。徳島県の給食センターで、「五郎」を使ってデータベースをつくり、栄養価計算をしているという話を、以前雑誌で読んだことがあったからです。
しかし、塾生がまず行いたかったのは、メニュー表の清書でした。栄養価の計算をするには、データベースが必要です。しかし、それを一人の力で入力することはできません。大学の栄養科のような機関が、XMLのデータベースを整備すれば、個々の栄養士が入力する手間を省けますし、勤務先や所属を越えて、栄養士がデータを活用できます。
また、高齢者やその家族が、食餌療法をする際にも役立ちます。
たとえば、病気や年齢や体格、大まかな好みを選択すると、メニューと栄養価が表示されるようなWebページがあると、とても便利です。
さて、ここまでは公共的な機関でのデータベース使用法でした。しかし、このような新しい試みが進むのは、民間企業からかもしれません。
たとえば、シルバービジネスに参入する企業では、ホームページのフォームあるいは訪問によって、会員を獲得し、そのデータを蓄積します。民間企業では、Accessを使ってデータベースを作成するのが望ましいでしょう。相方が試したところでは、Excelと異なり、余計なカンマが入ることもなく、文字列は文字列としてきちんとしたCSV形式でエクスポートでき、手前味噌ですが、たとえば相方がシェアウェアで配布しているツールを使って、確実にXMLに変換できるのです。
また、Webページの表組みデータも、Accessなら、そのまま読み込んできちんとCSV形式でエクスポートでき、XML形式に変換できます。
Accessのデータは、管理部門では、見積書・各種伝票類・元帳・台帳などに利用でき、介護用品などの在庫管理や社員管理にも役立ちます。販促部門では、良い新製品が登場するとDMを打つことができます。営業部門では、会員の居住区をマッピングして営業活動を強化したり、誕生日に記念品を贈ったり定期訪問するなどの顧客管理に使えます。
XMLのデータは、Webページの作成に役立ちます。いろいろな情報を掲載することで、会員間の交流もはかることができます。
これ以外にも、高齢者住宅の設計や、衣料品や介護用品の開発など、さまざまな分野で、XMLのデータベースを活かすことができます。それらは、実際の看護や介護や商品開発に携わる方々のアイデア次第で、より実りあるものとなるでしょう。
このコラムでは、XMLのファイルの集合を「データベース」として扱っていますが、これは本来のXMLというコトバの使われかたとは異なります。
XMLは、CALSの規格のひとつであるSGMLの流れを汲んでいるものの、CALSのほかの規格をも含むもののように扱われたり、単にHTMLの拡張として扱われたりしています。ひとつの「形式」として考えることが望ましいのかもしれませんが、実際のところ、社会で役立てるには、「データベースの利用方法」として捉えると、理解を得られやすいような気がします。
XMLやXSLは、HTMLに比べ、とっつき難いというイメージがありますが、活用には、ポイントがあります。
ひとつは、実戦で積み重ねたノウハウを持つ人が、QCのようにアイデアを出し合い実現していくことが望ましいということです。つまり、XMLの活用方法は、用途開発と同様の発想と努力によって見出されるということです。
もうひとつは、データベース作成にムダな労力を使わないということです。
あちこちに同じデータベースが存在する必要はありません。ここで述べた、栄養価のデータベースのように、個人の力で整備できない膨大なデータベースは、それを整備できる可能性のある機関が行ない、広く利用していただけるようにした方がよいのではないかとおもうのです。その際、シェアウェアのように利用料を設定してもよいでしょうし、データベース作成という仕事が派生することによりSOHOの力も生かせることでしょう。
XMLのシステム化にこそ、Linuxに見られるボランタリー精神と、地域や職業や年齢を越えた協力が、必要とされるのではないでしょうか。