コラム3.わたしとXML
私がXMLに関心を持った、そもそものきっかけは「チラシ制作」からでした。
ずいぶん昔のことですが、私の勤務していたスタジオに、チラシデザインの依頼がありました。
まだMacintoshは高価で、出力センタはどこにある?という時代に、何種類ものカラー刷りのチラシを、手書き原稿を頂いてから数時間のあいだにデザインして印刷に渡すというドトーの納期。
10名のデザイナ全員が取り組んでも、品名や価格といった、チラシに使う文字の方が間に合いません。通常の写植はもちろん、電算写植でも無理です。
当時、ベンチャーのソフトウェアメーカを主に担当していたわたしは、DTPソフト、Aldus PageMaker(当時はまだAdobeに合併されていなかった)を利用できないかと考えました。PageMakerで品名や価格等の文字を入力し、レーザプリンタで出力したものを写植に代えて使うという方法です。
ところが、PC-9801FAでWindows3.1版のPageMakerを動かすと、再描画速度が遅く、PageMaker上で1から商品データを入力していたのでは、到底納期をクリアできません。
そこで、データベースソフトを使う方法をとることにしました。
取り扱い商品の品名、内容、仕様、価格等をデータベース化しておき、チラシ原稿が届くと、品名の頭文字をキーに、チラシに掲載する商品情報を検索・抽出します。そして、標準価格を特価に変更すると、チラシ用データベースができるというわけです。
これらのデータを、品名、内容といった項目(列)ごとに、テキスト形式でPageMakerに渡します。
PageMaker側では、あらかじめ、品名は20ポイントのゴシック体、価格は60ポイントのPOP体というように、スタイルを定義しておきます。インポートしたひとつの列のデータを「全て選択」して、設定しておいた、品名などの「スタイル名」をクリックすると、即座にスタイルが適用されるという具合です。
この方法で、納期はクリアできたのですが、スタイル設定の方法は、もっと合理化できるのではないかとおもいました。列ごとに分けて渡すのではなく、全データを一括して渡し、ワンタッチでスタイル設定できないだろうか。
もし、データベースの個々のデータに「品名」や「価格」といった符号を付けてエクスポートし、PageMaker側で、その符号ごとに設定しておいたスタイルを自動的に適用できれば、非常に効率がよいのに......。しかし、その方法が見つからなかったので、以降、わたしは、図面付き見積書のデータをレガシーデータとして、各種伝票を生成し、元帳に転記する工程をシステム化するなど、デザインワークそのものの合理化ではなく、管理業務の合理化に腐心しました。
それから半年、一冊の本が出版されました。「CALSの実像(日経BP社)」
わたしは、そのなかのSGMLの考え方に関心を持ちました。
データベースがデザインワークを変えていくのではないか。チラシなどの情報は、商品データベースとしてサーバに置き、CATVのケーブルを利用して、主婦が随時アクセスできる時代が来るのではないか、チラシという印刷媒体のヴィジュアルデザインよりも、情報そのものが価値を持つ時代が来るのではないか、その根底にSGMLがあるのではないか。
その後インターネットを始めたわたしのまえに、難解なSGMLを理解していなくてもネットワーク利用のデータベースを実現する可能性を見せてくれる言語、HTMLが現れました。そして、SGMLのように難解ではなく、かといってHTMLではできないことを可能とする、XMLが現れました。
これはなかなかおもしろそうだ!わたしは、XMLに大きな期待を寄せています。
一方、相方は、地域の中堅企業で、コンピュータ室の長を務めていました。パソコンを利用して、総務や業務、製造の工程管理を合理化してきたのです。
DOSの時代に、趣味でプログラミングを始めた相方にとって、データベースは「プログラミングの対象」です。データベースの元データさえあれば、いろいろなプログラムを作って楽しめる、それが相方のデータベースに対するスタンスです。
DOS版「桐」やLOTUSマクロが大好きだった相方は、ときどき請われて、DOS版ソフトのサポートにも出かけています。また、商業関係の仕事に就く友人のために、VisualBasicで顧客管理プログラムなどを開発してきたので、データベースが大好きなのです。
「XMLは、ウェブの画面を派手に動かしたりできないのでツマラナイ」と、つい最近まで、XMLの本を読むわたしを横目で見ていた相方ですが、IE5.0の正式版が出て、実際にデモページを見られるようになると、いきなり「おもしろそうだ」と取り組み始めました。本気で取り組み始めると、やはりプログラマです、ツールやサンプルを作ることに熱中し始め、遊んでくれなくなりました。
「XML入門」を買ったのが、初めてのデートの日だったというのに、この状況は、わたしとしては、ちょっと拗ねたいところですが(初デートがパソコンショップと紀伊国屋のパソコン本コーナを見て回っただけというのも変だけど)、まぁ、ここしばらくは、昼食を食べ忘れてXMLという日々が続くでしょう。ちゃんちゃん。
読んだ本で、印象に残っているものです。
「CALSの実像〜コストダウンの決め手〜」円川隆夫・伝田晴久・城戸俊二著(日経BP社)
「ロジスティクス〜戦史に学ぶ物流戦略〜」谷光太郎著、野中郁次郎解説(同文書院インターナショナル)
「SGMLを使いこなす」吉岡誠編著(オーム社)
「XML入門」村田真編著(日本経済新聞社)
「標準XML完全解説」XML/SGMLサロン著(技術評論社)